「最近、食事中にむせることが増えてきた…」
「認知症が進み、ごはんをうまく口に運んでくれなくなった…」
ご家族やご利用者様の介護現場で、このようなお悩みを抱えてはいませんか?
実は、私たちが毎日何気なく行っている食べる・飲み込むという動作は、脳からの細かな命令によって緻密にコントロールされています。
そのため、脳の機能が低下したり、脳卒中などの疾患があったりすると、脳の機能が低下するとスムーズに食事を摂れません。
今回の記事では、「脳の機能と飲み込みの関係」をテーマに詳しく解説します。 部位ごとの役割や、認知症による食事トラブルの違いを紹介します。さらに、ご家庭でできる食形態の工夫やおすすめ商品まで幅広く取り上げました。
脳の仕組みを知ることで、お体の状態に合わせた適切な食事が見えてきますので、ぜひ最後まで目を通してみてくださいね。
脳と「飲み込み(嚥下)」の深い関係とは?
私たちが食べ物を胃へ送り込む動きを「摂食嚥下(せっしょくえんげ)」と呼びます。
目の前の食べ物を目や匂いで「食べ物だ」と認識し、口へ運び、歯で細かく噛み砕き(咀嚼)します。
次に、舌を使ってゴクンと飲み込みやすい形にまとめてから喉・食道へと送り込みます。
このように、一見シンプルな動作ですが、実は脳のさまざまな部位が関わっています。

大脳の役割:意識的なコントロール
まず、大脳は、「考える」「判断する」「意識して身体を動かす」といった働きを担っています。
例えばお食事の場面では、目の前にあるものを「食べ物」と認識します。
そして、箸やスプーンで口へ運び、しっかり噛む動作をコントロールしています。
脳幹・延髄の役割:自動的なコントロール
一方で、呼吸や心臓の動きのように、私たちが意識しなくても勝手に働いてくれているのが脳幹や延髄です。
ここには「嚥下中枢(えんげちゅうすう)」と呼ばれる場所があり、いわば『飲み込みの自動スイッチ』の役割を果たしています。
食べ物が噛み砕かれて口の奥、咽頭に送られます。すると、この嚥下中枢が刺激され、「ゴクンと飲み込みなさい」という命令が自動的に出ます。
それと同時に、食べ物が気管に入ってむせないよう、一瞬だけ息が止まり、気管のフタが閉まるという複雑な反射が瞬時に行われているのです。
脳の機能低下で起こる「摂食嚥下障害」と食形態の調整
脳卒中の後遺症や加齢、さまざまな疾患によって脳の機能が低下すると、安全に食事を摂ることが難しくなる「摂食嚥下障害」が起こります。
無理をして今まで通りの食事を続けていると、誤嚥(ごえん:食べ物や唾液が気管に入ってしまうこと)や、そこから「誤嚥性肺炎」を引き起こすおそれもあります。
そのため、お体の状態や飲み込む力に合わせて、食事のやわらかさやとろみなど、「食形態」を調整することが大切です。
状態に応じた食形態のステップ
・ペースト状
噛む力が低下している方向けです。ペーストは固形物がなく、なめらかな状態にすることで、噛む力がなくても召し上がることができます。
・ムース食、ゼリー
形は残しつつ、スプーンの裏や舌で簡単につぶせるやわらかさに調整した形態です。口の中でまとまりやすく、喉を通りやすいです。食材の形に合わせて成型されているものもあり、目からも食べる楽しみを感じていただけます。
・とろみ調整(水分補給のむせ防止)
お茶やお湯などのサラサラした液体は、喉へ流れ落ちるスピードが速いため、飲み込みのスイッチが間に合わずむせやすくなります。とろみ調整剤を使って適度な粘度をつけることで、水分を安全に喉へ送り込むことができます。
少量でしっかり栄養補給!高カロリーゼリーの活用
食形態を調整すると、水分量が増えて一回に食べられる量が減ってしまい、エネルギー不足(低栄養)に陥りがちです。食事量が落ちてしまった場合は、少量で効率よくカロリーやたんパク質を補給できる「高カロリーゼリー」などの栄養補助食品を上手に取り入れましょう。
認知症の種類と嚥下障害の違い
一口に認知症と言っても、原因となる病気によって食事面で直面するトラブルの種類が異なります。代表的な「アルツハイマー型」と「レビー小体型」の違いを知っておきましょう。
アルツハイマー型認知症:食べる動作や認識のケアが中心
アルツハイマー型認知症の方は、喉の飲み込み機能自体は比較的長く保たれることが多いのが特徴です。
しかし、大脳の機能低下により、「しっかり食べた直後なのに『まだ食べていない』と言ったり、逆に食べていないのに『もう食べた』と思い込んでしまう」といった記憶に関するトラブルが多く見られます。
また、周囲の環境に影響を受けやすく、食器の柄やテーブルクロスのしわ、周りのものの色などに気を取られると、食事を途中でやめてそちらに意識が向いてしまう(注意散漫になる)こともよくあります。
対策のポイント
食べ物を認識しやすいように一口サイズにカットしたり、声をかけて食事に意識を向けたりするアプローチが効果的です。また、食器の柄に気を取られてしまうこともあるため、柄のないシンプルな無地の食器』を選び、テーブルのしわを整えてお食事だけに集中しやすくなります。テーブルのしわを整えて、お食事だけに集中しやすくします。
レビー小体型認知症:物理的な飲み込みにくさへのケアが中心
レビー小体型認知症の方は、病気の比較的早い段階から喉の運動機能や自律神経に影響が出やすく、飲み込みの遅れやむせ、さらには「飲み込んだと思ったら食道から逆流してしまう」といったトラブルが起こりやすくなります。
あわせて、手の震え(パーキンソニズム)による食べづらさや、「食べ物に虫が入っているように見える」といった具体性のある「幻視」が現れることも特徴です。
対策のポイント
喉の反射を助けたり逆流を防ぎやすくするためにとろみをつけたり、ポタージュ状にするなどの食形態の工夫が欠かせません。手元が震えてもこぼしにくい深型のお皿や、すくいやすい介護用食器を用意し、食後もしばらく姿勢を保つなど、安全で落ち着いて食べられる環境を整えるのが重要です。
脳卒中予防と日頃の健康管理には「減塩」が重要!
摂食嚥下障害を引き起こす大きな原因の一つに、脳血管障害の脳卒中があります。脳卒中の後遺症に悩まされないためには、日頃からの予防と生活習慣の改善が何よりも大切です。
| 脳卒中の最大の原因は、高血圧です。高血圧の最大の生活習慣要因は、食塩の過剰摂取です。日本人は食塩摂取の多い民族ですので、脳卒中予防のためにまず行うべきことは、減塩です。 また太っていて血圧が高い人は、特定保健指導などを利用して減量すると、血圧が下がる可能性が高いといえます。たばこは、がん、心臓病、脳卒中、COPD(慢性閉塞性肺疾患)のすべてのリスクを高めます。たばこを吸っている人は、やめましょう。大量飲酒も脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の全てのリスクを高くすることがわかっています。
(参照:厚生労働省 e-ヘルスネット「脳血管障害の予防」) |
このように、減塩はお体の健康を守る第一歩です。すでに塩分制限が必要な方はもちろんのこと、ご家族皆さんの将来の脳卒中予防のためにも、日々の食事から無理なく塩分を控えていきましょう。
在宅や介護現場で役立つ!おすすめの介護食・便利な商品
毎日の介護やお食事作りを無理なく続けるためには、便利な商品を使用することをおすすめします。
(1) 見た目もおいしい「やわらか食・ムース食」
家庭で食材を適切なやわらかさやペースト状に調整するのは、手間も時間もかかります。
市販のムース食やお惣菜セットなら、彩りや見た目の美しさを保ったまま、スプーンですっとつぶせるやわらかさに仕上げられているため、食べる楽しみを損ないません。
普段のお食事に近い盛り付けや美味しさを実現しつつ、素材をすりつぶしてムース状にした食品で、温めるだけで簡単に食べられます。口の中でのべたつきやまとまりやすさにも着目し、飲み込みやすさに配慮しました。
(2) 手軽にエネルギー補給「高カロリーゼリー」
食が細くなってしまった方や、一度にたくさんの量を食べられない方におすすめです。
小さめのカップ1個で100〜200kcal以上のエネルギーやたんぱく質、ビタミンを効率よく摂取できます。デザート感覚で美味しく食べられるのも嬉しいポイントです。
少量で150kcalを効率よく摂取できます。飲み込みやすさに配慮されているのはもちろん、食べきりサイズで常温保管が可能なため、管理が簡単で衛生的です。毎日の栄養補給に安心してお使いいただけます。
(3) 美味しく血圧管理「減塩調味料」
脳卒中の予防や再発防止には、日頃の減塩が欠かせません。
減塩だしや減塩しょうゆ、レトルトの減塩惣菜などを活用すれば、料理の出汁感や風味を活かして、物足りなさを感じさせずに美味しく塩分をカットできます。
一般的なこいくちしょうゆと比較して、たんぱく質・食塩相当量が1/2以下。さらにカリウムやリンも調整されています。「だし」で味を補うのではなく、お醤油本来の風味を楽しめるよう「本醸造」にこだわりました。
(4) お食事をスムーズにする「食器」
アルツハイマー型認知症の方のように、お皿の柄に反応して食事に集中できない場合は、柄がない無地のシンプルな食器を選んであげると、目の前のお料理に集中しやすくなります。
ご飯とおかずを複数の小鉢に分けるよりも、ワンプレートに盛り付けた方が迷わずスムーズに食べられ、お食事の時間を短縮することにも繋がります。黒マットのプレートは、白いご飯や食材の色がくっきりと引き立つので特におすすめです。
お身体や認知の症状に合わせて、ぴったりの食器を選んでみてくださいね。
totte-plate プレートL ブラウン 【miyamaの器シリーズ】
木の年輪のような自然が作り出す美しい形に学んだ器のシリーズです。やわらかなエッジラインは、画一的な工業製品の枠を抜け出し、重なり合う自然な揺らぎとなって、豊かなテーブルを作ります。
脳の仕組みを知って、食べる楽しみをいつまでも
脳の働きと飲み込みの仕組みを知ることで、「なぜむせてしまうのか」「どうしてご飯を食べてくれないのか」という理由が見えてきます。
理由が分かれば、無理をして普通の食事を続けるのではなく、適切な食形態へ切り替えたり、認知症状に合わせた環境を整えたりと、前向きな対策を取ることができます。
市販の美味しいやわらか食や高カロリーゼリー、減塩食品、使いやすい食器などを上手に取り入れながら、ご家族の負担を減らしつつ、食べる楽しみを守っていきましょう。
お食事の形態や制限について不安な点がある場合は、主治医や言語聴覚士、管理栄養士などの専門家に相談しながら進めてみてくださいね。
ビースタイルでは、栄養管理や料理の専門スタッフがサポートします。
商品についてお気軽にお問合せください!




