2026年(令和8年)6月1日、診療報酬改定が施行され、入院時食事療養費に係る食事療養等の特別食加算の対象に嚥下調整食が新設されました。
改定の背景には、医療従事者の賃金の上昇、物価高騰への対応、そして少子高齢化社会を見据えた質の高い医療・介護の提供、現役世代の負担を抑制するという理由があります。
また、入院時の食事療養の質の向上を図るうえで、美味しく安全な食形態で適切な栄養量を有する嚥下調整食についても新たな基準が設定されました。
今回は、「嚥下調整食の特別食加算化」にフォーカスを当て、算定のために現場へ求められる具体的な栄養強化対策を解説します。
令和8年度診療報酬改定における「嚥下調整食」の特別食加算
今回の改定において、これまで腎臓病食や糖尿病食などの「治療食」に限定されていた特別食加算(1日につき76点)の対象に、新たに「嚥下調整食」が追加されました。
ミキサー食やソフト食は、常食以上に調理の手間やコストがかかるにもかかわらず、これまでは正当な評価が得られにくいという課題がありました。
それが、今回の改定で以下のように位置づけられました。
特別食加算における「嚥下調整食」の算定要件
【厚生労働省の告示・通知より抜粋】Ⅰ-1-③入院時の食事療養に係る見直し
第1 基本的な考え方
入院時の食事療養の質の向上を図る観点から、美味しく安全な食形態で適切な栄養量を有する嚥下調整食について新たな評価を行うとともに、多様なニーズに対応できるよう、特別料金の支払いを受けることができる食事の要件を見直す。
第2 具体的な内容
1.入院時食事療養費に係る食事療養等の特別食加算の対象として、おいしく安全な食形態で適切な栄養量を有する嚥下調整食を新たに評価する。
| <改定案>
[算定要件] 二 入院時食事療養及び入院時生活 療養の食事の提供たる療養に係る特別食 (一) 治療食 (二) 嚥下調整食 |
その他、厚生労働省の公式発表や具体的な内容については、以下のページよりご確認いただけます。
【厚生労働省|令和8年度診療報酬改定について】
【厚生労働省|入院時食事療養費に係る食事療養及び入院時生活療養費に係る生活療養の実施上の留意事項について(令和8年3月5日保医発第16号)】
今回の改定において、加算基準を満たすためには、下記のポイントを考慮した嚥下調整食が必要です。
●嚥下調整食加算の6つのポイント
①安全で嚥下しやすい物性に調節すること
②盛り付け・味・香り・適切な温度で美味しさに配慮すること
③常食と同様の栄養量を提供すること
④多職種によるミールラウンドを行うこと
⑤十分な情報提供を行うこと
⑥責任者は適切な嚥下調整食提供のための研修を行うこと
※安全な食形態で、常食と同等の要件を満たしていれば、市販品を使用することも可能です。
●注意点
以下のような場合は加算の対象外となりますので、注意しましょう。
・単にビューレやペースト状にしたもの
・常食を刻んだだけのもの
・刻みにとろみをかけただけのもの
・主食のみを嚥下調整食とした場合
特別食加算に求められる「質」の基準
上記の6つのポイントの中で「①安全で嚥下しやすく物性を調節すること」の基準となるのが、日本摂食嚥下リハビリテーション学会が策定した「学会分類2021」です。

(画像出典:栄養指導Navi)
特別食加算を算定するためには、「学会分類2021」のコード(0j、0t、1j、2-1、2-2、3、4)に準拠した食事の提供が必要です。
学会分類の物性基準に相当するその他の分類についてもご参照ください。
特別食加算に求められる「多職種連携」の要件
特別食加算を算定し、嚥下調整食を提供する場合は、こちらの項目も満たされていなければなりません。

・毎日1食は医者、管理栄養士または栄養士による検食が行われ、食形態、見た目、味が満たしているか確認すること。
・定期的に嚥下調整食に関わる管理栄養士、言語聴覚士、調理師などによる試食会やカンファレンスが行われていること。
・責任者は、嚥下調整食のテクスチャーや調理方法などに関する実習を伴う適切な研修を修了した当該保険医療機関の管理栄養士であること。
食物の「硬さ」「粘度」「付着性」などを、管理栄養士を含め、言語聴覚士や歯科医師、看護師といった専門家が協力し、機能評価に基づいて食形態を決定・モニタリングしているかがチェックされます。
このような「ミールラウンド・カンファレンス」を行うことが重要なポイントとなります。
※ミールラウンド:歯科医師、看護師、言語聴覚士、栄養士などの多職種の専門家が、実際の食事場面を通じて摂食状況を見て回ること
高齢者の嚥下障害者に潜む「低栄養」のリスク
なぜ、ここまで厳しく「適切な栄養量」や「多職種連携」が求められるのでしょうか。
そこには、高齢の嚥下障害者が陥りやすい「低栄養」への強い危機感があります。
摂食機能が低下した患者様に安全面(誤嚥防止)ばかりを優先して水分を多量に加えたミキサー食を提供すると、食事全体のボリュームが増える一方で、「1食あたりの栄養密度」が著しく低下してしまいます。
一度にたくさん食べられない患者様は、結果としてエネルギーやたんぱく質が不足し、以下の「負の連鎖」に陥ります。
【低栄養の負の連鎖】
食機能の低下 ➔ 水分で薄まった低栄養な食事 ➔ 体重・筋力の減少(サルコペニア) ➔ 嚥下筋力のさらなる衰え ➔ 嚥下障害の悪化
この連鎖を断ち切るためには、食形態が安全なだけでなく、「少量でもしっかり栄養が摂れる工夫(栄養強化)」と、「食欲不振を改善する見た目の工夫(彩り・造形)」という、2つの軸の対策が現場に求められます。
厨房の負担を減らす「3つの食事提供方法」
人手不足の厨房において、毎日見た目と栄養価を両立した嚥下調整食を一から手作りすることは容易ではありません。そこで、市販の専門食品を効率的に活用する方法が挙げられます。
嚥下調整・やわらか食の導入
学会分類に準拠し、水分で薄めずに素材本来の栄養価をキープした冷凍・レトルトおかずを活用します。
厨房での「ミキサーにかける・型に流して固め直す」という手間を省きながら、特別食加算の基準をクリアする見た目と栄養を両立できます。
高エネルギー・高たんぱく補食の追加
一度に通常の食事量を完食できない患者様に対して、食後のデザートやおやつ感覚で摂取できる高密度の栄養ゼリーや飲料を取り入れます。
これにより、多職種のチームで評価した目標栄養量の摂取に繋がりやすくなります。
食事量を増やさずエネルギーを底上げできる商品の活用
主食や汁物など、毎日の定番メニューの栄養価を底上げするパウダーや個包装の製品を導入します。
これは病院の厨房だけでなく、新設された「退院後訪問栄養指導」の際にご家族へ自宅での栄養強化対策として提案・指導しやすいというメリットもあります。
診療報酬改定の要件を達成するためのポイント
令和8年度の診療報酬改定で新設された「嚥下調整食の特別食加算」を算定するためには、「見た目や安全性を保ちながら、適切な栄養量を確保すること」が必要です。
しかし、人手不足に悩む厨房で、これ以上調理の手間を増やすことは現実的ではありません。
そこで重要になるのが、先ほど挙げた3つの戦略を具現化する、市販の「栄養強化商品」を組み込むことです。
おいしく安全な食形態で、常食と同等の栄養量や見た目などの要件を満たしていれば、市販の商品を導入して提供することも可能となります。
こうした食品を上手く活用することは、病院や施設での食事提供の負担を大幅に削減する有効な方法です。
中でも、取り入れやすいのが、主食と汁物といった「定番メニュー」の栄養価を底上げすることです。
毎日の食事で提供するおかゆや汁物に、味や見た目を変えない栄養強化オイルやパウダーを加えることで、食べる量を増やすことなく自然に栄養を高めることができます。
また、一度に通常の食事量を完食できない方に対しては、高カロリー補食を1品追加するなどで、不足する栄養素を補うことができます。
目標の食事量が足りない患者様・ご利用者様に対して、少ないボリュームでもしっかりエネルギーやたんぱく質を摂取できるゼリーやドリンクを導入する施設も増えています。
このように、今ある厨房の体制や提供フローを大きく変えることなく、確実に対策を講じることができます。
患者様と現場を支えるおすすめの商品
ここからは現場の改定対策として導入しやすい3つの商品をご紹介します。
【栄養強化】日清MCTオイル お粥にプラス 400g
食事の量を増やさず、汁物やおかずに足して栄養強化ができる、MCTオイルです。
手軽にエネルギーアップができる定番アイテムとして、多くの医療・介護現場や在宅で使用されています。
施設の厨房でも使いやすい大容量の400gボトルです。
※特にこちらの商品は、油浮きを改善したMCTオイルで、食べた時の油っぽさを感じにくい仕様になっています。
油でありながら、少し水に親和性があるため、炊飯前に添加することができます。
【高カロリー】ミニタス エネルギーゼリー りんご味 25g×9個
・ユニバーサルデザインフード(UDF)「舌でつぶせる」
・日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食分類2021「1j相当」
わずか25gのミニサイズですが、エネルギー100kcal、MCTを6g配合しています。(たんぱく質0g)
甘みと酸味のバランスに、こだわったりんご味のフレーバーです。
通常の食事だけでは十分な栄養をとることが難しい方や、低栄養リスクのある方の補食として、栄養管理に活用することができます。
種類によってはたんぱく質が含まれていたり、食物繊維を摂取できるものもあるため、対象者様に合わせて商品を選ぶことができます。
※ゼリー等の補食を導入する際は、おやつとしてではなく、3食のトレイの1品として配置することが重要です。
「常食と同等の栄養量確保」の対象として、多職種連携による1食ごとの栄養管理やモニタリングも行えます。
【栄養強化】栄養支援おかゆ 200g
エネルギー150kcal、たんぱく質10gをしっかり補給できる優れもののおかゆです。
適度なとろみが最初からついているため食べやすく、喉越しも安全。
香りや味にクセがないため、普段のお食事の主食と置き換えるだけで、厨房の手間を増やすことなく自然に栄養の底上げが可能です。
今回ご紹介した商品以外にも、ビースタイルでは治療食・介護食・栄養補助食品等を豊富に取り扱っています。
商品選びに悩まれている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください!
ビースタイルは、患者様・ご利用者様を支える医療専門職種の皆さまを応援しています。



